あいちの労働あれこれ


防災を体験し 楽しく学ぶ ~民間のアイデアが生む学びの場~

 平成27年に創業した株式会社Quietは、岡崎市と豊橋市にオフィスを構える保険代理店です。損害保険や生命保険など幅広い保険商材を取り扱う一方、「人の未来をソウゾウする」という経営理念を掲げ、地域の問題解決に向けたさまざまな活動を展開しています。
 今回は、そんな同社が令和4年から実施している、地域の子どもとその親たちに防災について興味を持ってもらうための体験型イベント『ぼうさいクエスト』をご紹介します。





防災をゲーム感覚で楽しく学ぶ「ぼうさいクエスト」

 株式会社Quietが企画・運営する『ぼうさいクエスト』は、社員を中心に立ち上げられた体験型イベントです。働く世代、子育て世代を主なターゲットに、「防災の大切さをもっと多くの人に知ってほしい」という行政の悩みを受けて、親子で楽しみながら学べる企画として考案されました。


同社取締役の平岩 了さん


 「弊社では毎年、経営指針書を作成しており、その中で『体験を提供し地域から応援される保険代理店になる』というビジョンを掲げています。」と同社取締役の平岩了さん。「地域から応援されるためにも、住民の皆さんの暮らしに役立つさまざまな活動をしていきたい。こうした想いから、弊社では単に保険商品を取り扱うだけでなく、地域に貢献する活動にも力を注いでいます。」

 「ぼうさいクエスト」のアイデアが生まれたのは令和3年秋頃のこと。経営指針書で掲げた地域貢献を形にするため、「何かお手伝いできることはないか」と市役所を訪問したのがそもそもの発端でした。その後、岡崎市の防災イベントを企画しようと社員を中心とした社内チームが立ち上がり、改めて市役所を訪ねたところ、防災担当者の悩みとして挙がってきたのが「啓発活動」でした。

 市内の子どもたちには小・中学校での防災訓練などを通じて十分な周知が行われている一方、その親にあたる現役世代の人たちには、防災関連の情報を届けられていないという課題が浮かび上がってきたのです。

 毎日忙しく働いている人に、貴重な休みを削って防災イベントに参加してもらうのは難しい――。そこで「防災イベントにエンタメ要素を加えたらどうか」と考え、親子で楽しみながら防災を学べる、ゲーム性に富んだイベント「ぼうさいクエスト」を企画しました。

 「クエストの名前の通り、冒険要素を交えたスタンプラリーを実施し、防災に関するいろんな体験をしてもらえるように企画を練り上げました。そして、市内の学校でイベントのチラシを配布してもらったところ、子どもたち以上にお父さんたちが食いついてくれたんですよね。」と平岩さんは笑顔で話します。


岡崎市内の小・中学校などに配布された
「ぼうさいクエスト4」の案内チラシ



防災に関する「経験値」をため  勇者の証をゲット


 イベントの内容は、市内の籠田公園に設けられた各ブースを巡り、スタンプを集めながら勇者を目指すというもの。勇者となった親子には、その証として防災グッズがプレゼントされます。防災月間に絡めて令和4年9月に行われた第一回の「ぼうさいクエスト」では、初開催にもかかわらず1,000名ほどが会場を訪れました。想定以上の盛り上がりを見せ、その後も毎年開催されています。

 令和7年11月29日に行われた「ぼうさいクエスト4」では、同年5月に入社したばかりの鹿田翔さんをプロジェクトリーダーに抜擢。「実は昨年のイベントもボランティアスタッフとして関わったのですが、まさか今年はリーダーを務めることになるとは思ってもみませんでした。」と話す鹿田さん。岡崎市の担当部署との調整役なども担うことになり、「はじめての経験で不慣れな点も多く、開催までは本当に苦労の連続でしたね。」と振り返ります。


「ぼうさいクエスト4」のリーダーを務めた鹿田 翔さん


 「ぼうさいクエスト4」で新たに登場したのが、「まよいのどうくつ」、「なぞのお店」、「ほうかいごのせかい」、「まどうしゃ」の4つのブースです。

 「まよいのどうくつ」では、洞窟に見立てて水蒸気の煙を充満させたテントを設置し、火災に遭遇した時の煙を疑似体験できるように。そして「なぞのお店」では、防災グッズを備蓄するための箱「もしものボックス」を限定100個でプレゼントしました。




テントに無害な煙を充満させ  火災時に視界が遮られる状態を再現した「まよいのどうくつ」


 「ほうかいごのせかい」では、地震への備えをゲームで体験。「防災袋に何を詰めたらよいか」、「部屋の中にはどんな危険な要素があり、それをどうやって取り除くのか」などを考えてもらいました。
 「まどうしゃ」のブースには、魔法のような車として「PHEV」が展示されました。災害で停電した際、車を電源として活用すれば明かりを付けたり、調理をしたりできることを紹介し、防災時の活用方法を周知するのが主な狙いです。




ゲームを通じて地震への備えについて学ぶ「ほうかいごのせかい」のブース





「まどうしゃ」のブースでは  災害時の車の電源の使い方などをレクチャー


【参加者の声】

 チラシを見て、子どもたちと楽しめそうだと思い参加しました。煙体感ハウスがとてもためになりました。何も見えなくて、体験していないと、実際に災害にあったときパニックになるでしょう。体験するのとしないのとでは、心構えが全然違うと思います。

 起震車で震度6や7の揺れを体験しましたが、こんなに大きいとは思いませんでした。家具など、何も固定していないので、対策しておかなければと感じました。このような体験イベントはあまりないので、子どもも災害に対して勉強することができて、とてもいい経験になったと思います。楽しみながら学べるよい企画だと思います。


 前回に引き続き、たくさんの親子連れで賑わいを見せた今回の「ぼうさいクエスト」。リーダーを務めた鹿田さんは「当日は特にトラブルもなく、たくさんの方に体験を楽しんでもらうことができて来年への励みになりました。体験を通じた防災意識の啓発はできたと思いますが、『ぼうさいクエスト』はあくまで一過性のイベントに過ぎません。今後は、日常生活においても防災を意識してもらえるような体験を提供できればと思います。」と話してくれました。


空き家問題の解消に繋がる、新たな防災プロジェクトも

 今回、「なぞの店」で配布した「もしものボックス」は、「地域防災に関連した新たな企画の布石にもなっています。」と話す平岩さん。同社では今後、地域防災に関連した企画第二弾として、岡崎市内の中小企業200社から備蓄品を募り、空き家を活用した防災倉庫を設置するプロジェクトを計画中。


ぼうさいクエストで提供された「もしものボックス」を手にする鹿田さん


 全国的に空き家問題が注目される昨今。岡崎市の中心市街地においても、徐々に空き家が増えてきています。そこで、空き家の新たな活用法を考える中で、同社が目を付けたのが「備蓄品」でした。

 「岡崎市内の備蓄品について詳しく調べてみると、実は十分に足りているとは言えない状況が見えてきたのです。」と平岩さん。「空き家と備蓄品の問題を同時にうまく解決できないかと考え、岡崎市の民間企業から備蓄品の寄付を募るプロジェクトを考えてみることにしました。」

 同社が構想するプロジェクトでは、民間企業から寄付を受けた備蓄品を置く場所として、市内の空き家を活用します。単なる防災倉庫とするのではなく、リノベーションすることで「魅せられる倉庫」に改築。1階部分を「ぼうさい倉庫ラウンジ」として有効活用する計画です。

 「備蓄品を入れたボックスには協賛企業の社名を掲載しますので、このラウンジで何らかのイベントを開催した際には、ボックス自体が企業の広告としても効果を発揮します。ぼうさい倉庫ラウンジは、協賛企業が自社のイベントなどで自由に活用できるようにしたいと考えています。今後は企画内容をさらにブラッシュアップしながら、地域の課題解決につながるプロジェクトとしてぜひ形にしていきたいですね。」と平岩さん。

 保険代理店という本業の枠を超え、独自の視点で地域防災という社会課題に向き合う株式会社Quiet。ユニークな発想を活かしながら「本気の地域貢献」を目指す同社の取り組みは、地域に根差した企業が新たな役割を果たすための大きなヒントになるはずです。


DATA

株式会社Quiet(愛知県岡崎市上里2丁目20-1)




 岡崎市・豊橋市を拠点に、損害保険・生命保険をワンストップで提供する株式会社Quiet。「人の未来をソウゾウする」を経営理念に、さまざまな予期せぬリスクに備えた幅広い提案を行っています。また、本社を構える岡崎市の行政と手を携えながら「ぼうさいクエスト」や「みんなでつながる実行委員会」を立ち上げるなど、地域活動にも積極的に取り組み、安心と絆のある暮らしづくりを支えています。

株式会社Quiet ホームページ

(令和7年11月取材)