【事業者向け】労務管理WEB講座



 保険・年金Q&A第3回は、雇用保険の手続でありがちな資格取得漏れ・資格喪失漏れについて、その原因・対処法・防止法を解説してまいります。





 弊社で5年余り勤務し、ご家族の都合で退職される社員の方がいらっしゃいます。雇用保険の資格喪失手続をしようとしたところ、保管してあるはずなのに、この方の資格喪失届の用紙が見当たりません。
 前任者に確認してみたところ、雇用保険に関連する書類は、全員の分を1か所にまとめて保管してあるので、他の場所には置いていないそうです。ただ、その退職者については、会社への提出書類がなかなか揃わなかったので、手続が遅れたのかもしれないという話でした。
 ハローワークで確認したところ、なんとこの方については、雇用保険の資格取得届が出されていないことが分かりました。雇用保険料については、入社した時から給与天引きしていましたから、手続されていないなど思いもよらぬことです。
 なぜこんなことが起こるのでしょうか?また、どうしたら良いのでしょうか?





手続漏れの原因


 雇用保険の資格取得・喪失手続を忘れてしまう原因は、数多くあります。
 まず、人事・労務担当者の知識不足があります。雇用保険の対象者や手続の期限、必要書類などの理解が不十分だったり、パート・アルバイト・短時間労働者などの適用判断が曖昧だったりすることがあるのです。
 業務フローの不備も原因となります。入退社手続と雇用保険手続が連動していない、担当者間の連携不足により情報共有が遅れる、勤怠・雇用契約情報が手作業でミスが発生しやすい、スケジュール管理が不十分ということもあります。繁忙期や長期休暇の影響で、手続が後回しになることもあります。
 また、社会保険労務士に手続を委託している場合には、連携が不十分で提出漏れが発生することもあります。




手続漏れが分かったときの対処法


 手続漏れが発覚したときや、その可能性があるときは、速やかにハローワークに相談します。ご質問者様が、早い段階でハローワークに確認したのは、すばらしいことだと思います。
 事実関係を整理して、ハローワークに状況を説明します。原則として2年前までは、過去の期間についても手続が可能です。さらに、今回の事例のように、雇用保険の資格取得手続をしたものとして、従業員の給与から保険料を徴収してきたのであれば、証拠資料を示すことによって、当初に遡っての手続ができます。



 ハローワークと相談しながら、資格取得漏れの場合には雇用契約書、出勤簿、賃金台帳など、喪失漏れの場合には退職届、退職証明書、賃金台帳などを準備して、遡及申請を行います。
 遡っての手続をする期間について、保険料の未納期間があれば、過去の保険料納付が必要になる場合もあります。
 そして、対象となる従業員への説明と対応も重要です。失業給付などに影響が出る可能性があるため、誠意を持って説明します。このとき、社労士など専門家の支援を受ける必要が生じることもあります。


手続漏れの再発防止策


 再発防止策も、手続漏れの発生原因に応じて多岐にわたります。
 入退社時のチェックリストに雇用保険手続を明記し、業務フローの見直しと標準化を行います。人事・労務・社労士間の連携ルールも再確認し明文化します。
 担当者教育の強化も必要です。雇用保険の適用基準、手続期限、必要書類などの定期研修を実施します。また、厚生労働省やハローワークの最新情報を共有します。
 勤怠・雇用契約・保険手続を一元管理できる労務管理システムの導入も検討したいです。入退社時に自動でアラートが出る仕組みが構築できるシステムが望ましいです。
 複雑なケース(短時間労働者、外国人労働者など)についてはハローワークに事前に相談します。




雇用保険被保険者情報の定期的なチェック


 管轄のハローワークに「雇用保険適用事業所情報提供請求書」を提出すると、事業所単位で雇用保険の加入状況に関する資料を受け取ることができます。
 この資料は、雇用保険被保険者の一覧表で、被保険者氏名、生年月日、雇用保険被保険者番号、資格取得日・喪失日、事業所番号、現在の加入状況(在籍中か退職済か)が掲載されています。
 請求は電子申請(e-Gov)ではできません。窓口または郵送での請求が必要です。様式は東京労働局のものがベースとなっていますが、地域によって異なる場合がありますので、他の地域では管轄のハローワークに確認のうえ請求書を入手することになります。
 また、個人情報保護の観点から、事業主本人または委任を受けた方のみが請求できます。
 年に1回程度この資料を入手し、定期的にこの資料と社内の被保険者データとを照合して、雇用保険の資格取得漏れ・喪失漏れをチェックすれば、長期にわたって手続漏れを見逃すリスクをなくすことができます。
 初めてこの資料を入手した時には、100歳を超えた方が被保険者のままになっているなど、資格喪失漏れが見つかることも珍しくありません。


出典:厚生労働省ホームページ https://jsite.mhlw.go.jp/yamagata-roudoukyoku/content/contents/001604342.pdf



まとめ


 雇用保険の資格取得・喪失手続の漏れは、企業の信頼性や従業員の生活保障に直結する重要な問題です。漏れの原因を構造的に理解し、発覚時には迅速・誠実に対応すること。そして、再発防止のためには業務フローの整備と人材教育、システム化が不可欠です。
 さて、次回(最終回)のテーマは「社会保険で起こりがちな給与と賞与の取り違え」です。
 どんなときに、間違えてしまうのか、間違えるとどのような影響があるのか、間違えないためにはどうしたら良いのかについて解説させていただきます。